着物文化をだめにしたもの

2ヶ月か3ヶ月 ずっと着物を着ていく中で

せめて100人に1人
いや1000人に1人でもいいから
着物を着てたらいいのにな

と思って街ゆく人を眺めていたけれど

京都に行っても奈良に行っても

着ているのはレンタル着物か
それが仕事な人くらい。

世界に誇る美しい民族衣装

それをダメにしたものは一体何だろう?と
私はこの間ずっと考えていたけれど

おそらくその答えというのは
敷居の高さにひるむ若者ではなく
その行くてを阻む
口うるさいおばさんたちなのだ。

私は本当に不思議に思う。

冬にタートルネックを着ていても
その長さどんな長さで
場合によっては上にはジャケットを着ていても
一人も文句を言う人はいない。

ホテルのラウンジやバーには
タートルネック禁止とは書いていないから
帝国ホテルの会員用ラウンジにはじめて
やってきた人が
アクセサリーのひとつもつけずに
タートルネックでズボン姿で来ることもある。

私は正直
えっあんたそんな格好で来るの?と思うけど

でもそれに対して

誰かが何かを言うことはない。

いい店に行くのにスニーカーを履いてても
オシャレな人が口紅をしていなくても
誰一人「それはおかしい!」と怒らない。

ところが着物になると話は別だ。

たった2センチ程度の違いで
ほんの些細なことに対して
突然見知らぬ人にあれこれ言われることがある。

お願いだから気づいて欲しい。

それが彼女たちにどれほどまでに
ネガティブで嫌な印象を与えているか。

せっかく何十分もかけて頑張ったのに
その日の気分が台無しになり
またそう言われるのを避けたくて
もう一度着ようと思わないだろう。
タートルネックは着てもいいのに
パーティーにアクセサリーを着けなくても
ハイヒールを履かなくても
誰も文句を言ってこないのに
なぜ着物だとあれこれうるさく言われないと
いけないのだろう?

(ちなみに私が毎日着ている単衣は6月まで着てはいけない。という人は実際毎日袷を着てぜひその辛さを味わってみて下さい)

私は一番着物をダメにした原因はこれだと思う。

なんでこんなにも頑張って
斜陽産業である着物文化に少しでも貢献しようという心ある若者の心を挫こうとするのだろう?

だったら偉そうに言ってないで
お前が着物を着ろよ!

と私は本当に声を大にして言いたいが

そういう人の大半は「昔着てたけど今は着ていない」人たちで、たいてい洋服姿の人だ。考えてもみてほしい。それって恥ずかしいことなのに。

私は昔ジョギングをしてた。
でも今はやってない。
それなのに一生懸命毎日5キロ走ってる人に
偉そうにものが言えるだろうか?

いや、あんた やめたんでしょ?
走ってる人はそう思うだろう。

っていうか普通恥ずかしくて
「実は昔走ってたんですけどね〜 あはは」
くらいしか言えないだろう。

昔フランス語やってた人も同じだろう。
「実は昔やってたんですよ。でも今はね〜」

ところが着物はそんな人が本当に偉そうな顔をして「私も昔は着物着てたのよっ」という。

そう、だから?

じゃあ今すぐあなたがすっぴんで
パジャマきた状態から30分で髪型までキレイに整えられて、一回もやり直しせずに美しい状態になれますか?

なれるなら今すぐに見せてください。感動したら土下座してすぐ弟子入りさせてもらうから。

でも私が弟子入りしたいと思うような綺麗なお姉様たちはそんな風に私に向かって語りかけてこない。彼女たちも毎日相当な時間をかけて頑張っているんだと思う。15分で着物が着れても、綺麗に着れるというのは話が別なのだ。

私は日本文化を殺したのは日本人自身だと思う。面倒くさいから、口うるさいから、しきたりばかりで嫌になるから。そんな人たちが日本文化を自らしりすぼまりにしていった。

宇治の中村藤吉は若者で賑わって50分待ちだった。なぜかって?べつに並外れてこの店が美味しいわけじゃない。でも中村藤吉はイノベーションとマーケティングが上手かった。それだけのことだと思う。

着物は本当に危機的状態にあると思う。
だからこそ着物産業にはイノベーションや若い人の発想を取り入れることが必要なのだ。
そして口うるさい人たちが一度黙ること。
そんなにうるさく言いたい人は超簡単バカでもわかる着物教室でも開いて小学生から教えたら?英検並みに敷居を低くしたら誰でも着れるんじゃない。そして自分が毎日美しい着物姿を近所の人に見せたら説得力も上がるんじゃない?

敷居が高く
頑張ってる人はすぐ馬鹿にされ
相変わらずツンとすました着物の世界。
着物がこんなに精神的に窮屈だったら
そりゃ誰も着ませんわ。

日本の文化、こんなんでいいんですか?

カフェはイノベーション生まれる場でもあり
私は2冊目の本で発展する街の鍵を研究してる
その鍵というのは、経験に対する開放性。

つまり「ありえへん」の真逆。

着物が戦ってる相手はね
頑張って着物を着ようとして
試行錯誤する若い女性じゃなくて
ユニクロでありTシャツであり
スニーカーなどのラクで誰一人文句を言わない
そんな相手だと気づいてほしい。