Informal public life in Paris

パリのパブリック・ライフ


セーヌ川やウルク運河沿いが砂浜になるパリ・プラージュ
セーヌ川やウルク運河沿いが砂浜になるパリ・プラージュ

パリはインフォーマル・パブリック・ライフに満ちた街。公園に行けば気持良さそうにピクニックをし、寝転んでいる人たちの姿は日常茶飯事。10年以上前から毎年夏に開催されている「パリ・プラージュ」では街のど真ん中のセーヌ川沿いに砂浜が出現し、長椅子に半裸で寝そべる人の姿も。ポンピドゥ・センター前の広場には大道芸人とそれを座ってのんびり眺める観光客。すぐ隣の噴水広場からはニキ・ド・サンファール作の奇想天外な彫刻の口から四方八方に水が飛ぶ。サン・ミッシェルの広場にグランドピアノを持ち込み演奏するピアニスト・・・「もしきみが幸運にも 青春時代にパリにすんだとすれば きみが残りの人生をどこで過ごそうとも パリはきみについてまわる なぜならパリは 移動祝祭日だからだ」とヘミングウェイは『移動祝祭日』で語っています。パリはいつもキラキラしていて、何かを忘れ、夢を見させてくれるような祝祭的な雰囲気があるのです。パリを訪れた写真家のマン・レイは友人となったシュールレアリストたちにパリを案内され、こんな生き方が合ったのか、と目を丸くして 「ホテルの部屋に遅く戻ったが、頭のなかには渦が巻いていて、その日の出来事でへとへとになっていた。全く新しい世界のなかに放り出されていることを感じていた。」と述べています。自分がこれだけだと思っていた生き方だけが全てではないのかもしれない・・・他の生き方だってありうるのかも。そしてなんとなく未来の自分に期待がもてる、そんな場がインフォーマル・パブリック・ライフだと思うのです。


Buttes-Chaumont

ビュット・ショーモン


 パリジャン達がこよなく愛するちょっとマニアックな公園。日本にはあまり知られていませんが、留学時代出会ったフランス人におすすめの場所は?ときいたら「ビュット・ショーモン!」という答えが何度も返ってきました。ビュット・ショーモンは19世紀にナポレオン3世が労働者たちの福祉の向上を目的として作らせた場所。コンクリートで作られた人口の滝や岩などがあり、平坦なパリでは珍しく起伏に富んだ公園です。かなり自然を感じるこの公園を人工的に作ったというのは信じるのが難しいほど。滝あり、池あり、洞窟のような怪しい穴あり、遊具や砂場、そして広大な芝生あり!幸せ気分でピクニックできるおすすめの場所。

パリ19区 メトロ7番線 Buttes Chaumont 等


Parc Montsouris

モンスリー公園


 留学時代行きつけだった最高に気持いい公園。ここで公園ではゴロ寝をするものだと学びました。ピクニックに目覚めさせてくれたのもここだったかも。パリの南、「パリ国際大学都市」の目の前にあり、世界中の留学生たちものんびり過ごしています。こちらもナポレオン3世がビュット・ショーモンとともに労働者福祉のために作らせた人工的な公園だそう。広大な池、起伏にとんで広い敷地、広大な芝生と、イギリス式の庭園でポニーもいます。パリでリラックスしたくなったらぜひ、寝転びにきてください。

 

パリ14区 RER B線 Cité Universitaire


La Seine, Paris Plage, Berges

セーヌ川


 パリの真ん中を横切るセーヌ川。セーヌ川には沢山の船が行き交い、そんな様子を眺めながらのんびり散歩する人もいれば、夕方からはちょっとしたピクニックをする人たちも。かの有名なポン・デ・ザール(芸術橋)の上で夜のピクニックをする人たちが橋を埋め尽くすという話を聞いたときには度肝を抜かれたものです。ノートルダム大聖堂付近では適当なワインを一本持って、パンとサラミでピクニックという気軽な夕飯をとっている人をよく見かけます。
 夏になるとセーヌ右岸にパリ・プラージュが出現。パリ・プラージュはパリに海岸を造ってしまおうという企画で2002年に始まりました。バカンスに行けない人たちのために、パリに居ながらにしてバカンス気分が味わえるようにという目的で開催されたそう。初回時に留学していた私は砂が敷き詰められた道の上に置かれた長椅子に水着姿の男性が寝そべっているのを見て本当に度肝を抜かれたもの。このイベントはパリジャンには大好評だったらしく、それ以来規模を拡大しながら続いています。通常高速道路が走っている場所をこの期間は通行止めにしてヤシの木まで植えた本格的な砂浜にしてしまうのです。もちろん浜辺にはカフェも。その発想がすごい!
 

 2012年からはではセーヌ左岸沿いの道路、オルセー美術館下からアルマ橋までを車両通行禁止にして「ベルジュ」という場が誕生。こちらも摩訶不思議な空間で、カフェあり、無料で遊べるゲームコーナーあり、のんびりできる空間や貸し個室まで存在します。ユネスコの世界遺産に登録されたセーヌ川添いの美しい風景を再発見してもらう目的で造られたそう。自由な発想でセーヌ川沿いを楽しんじゃおう!という遊び心に溢れた空間。貸し自転車、ヴェリブの自転車置き場もあり、サイクリングも楽しめます。パリから車を追い出そうという野心をもったアンヌ・イダルゴ市長のもと、パリの歩行者空間化と自転車道の整備はコロナ後にますます進んでいるようです。